ずっと恋していたいから、幼なじみのままでいて。
「そりゃあ、その危険な道の先に好きな人がいるからでしょ」


それってもう『目の前に山があるから』的な、理屈を超越した世界だよね。


心から尊敬はするけれど、あまりにもハイレベルすぎてついていけない。


「瑞樹ってメンタル弱いとこあるもんね。高校受験のときも先生たちから合格間違いなしって言われてたのに、必要以上に不安がってた」


海莉がヒョイと肩をすくめてクスリと思い出し笑いをする。


「合格祈願で神社に毎日通い詰めてさ。ちょうど流行ってた新型インフルエンザに罹って、危うく受験できなくなるところだったよね」


「……入試直前に生ガキで食中毒になった人には言われたくない」


「ほんと、お互い無事に合格できてよかったよねー。それはともかく、ふたりが両想いなのは確実なんだから、さっさとくっついてあたしの恋の手助けしてよ」


海莉があたしの肩をポンポンと叩いた。


実は海莉は1年生の頃から、生徒会長のことが好きなんだ。


生徒会長の関(せき)先輩は、いつもスマイル全開の愛され人気キャラ。


成績は優秀なんだけど、年上とは思えないくらい天然で抜けてるところがある。


そういう面白いところを同級生たちから見込まれて、半分ノリで生徒会長にされちゃった感じだ。


でも責任感のある誠実な仕事ぶりから、信頼はとても厚い。


雄太が生徒会役員になったのがきっかけで、海莉も生徒会長とたまに話すようになって、その飾らない優しい人柄にすっかり惹かれてしまった。
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