ずっと恋していたいから、幼なじみのままでいて。
「ここに毎日来ていた頃はね、ずっと変わらない場所だと思っていたの」


変化なんて知るよしもなかった幼い日。


ここはずっと変わらない、雄太とあたしの宝物だった。


でもいつの間にか木々は高く成長して、コンクリートはずいぶん汚れて端っこが欠けてるし、名前も知らないたくさんの花が風に揺られて咲いている。


変わらないと信じていた時間と、変わってしまった現実。


でも、あたしは覚えてる。


たしかにこの場所で、あたしたちは幸せな時間を過ごした。


間違いなくここは、特別な場所。


あたしと雄太の宝物。


「なあ、瑞樹」


「ん?」


「キスしよう」


「…………」


いきなりなにを言われたのか、最初のうちは理解できなくて、目をパチパチさせた。


でもそのうちに、正確な意味が毛細現象みたいにジワジワ脳に浸透してきて、顔に血が集まってくる。


キス?


……は!? キスぅ⁉︎


「な……な⁉︎」


うまく息が吸えなくて声が出てこない。


『キス』って単語が、頭の中でバチバチ火花みたいに弾けている。


ものすごい勢いでドキドキする心臓から、大量の血液が押し出されて、全身を暴れ回ってる。
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