ずっと恋していたいから、幼なじみのままでいて。
心の中で絶叫しながら、体全体が火照ってオデコに汗が浮かんでる。


「うわ、お前の頭から今にも湯気が出そうだな。でもちゃんと言わなきゃ絶対に許さない。正直に白状しなさい」


その言葉にも、雄太の手の感触にも胸がキュンキュン忙しい。


こんな意地悪されてるのに、すごく幸せを感じちゃうなんてもう末期だ。


これは早めに負けを認めた方がいい。じゃないとほんとに心臓がもたない!


「し……」


完全に敗北を受けいれたあたしは、照れ臭さのあまり地面を転げ回りそうになりながら、モゴモゴとつぶやいた。


「し、しても、いい……」


「ん? 聞こえない。もっとはっきり大きな声で」


「してもいい、けど!」


「けど?」


「けど、ここ、お父さんとお母さんがキスした場所だから」


この公園はお父さんとお母さんが恋人同士になった日、初めてキスした場所。


思い出の場所だけど、今日あのふたりは離婚するわけで。


なんというか、さすがに縁起が悪いというか。ちょっとこだわってしまうというか……。


「それ、俺も知ってる。だからこそ今日、ここで瑞樹とキスしたい」


「え?」


顔を上げると、目の前に優しい微笑みがあった。


さっきまでの少しふざけた様子とはまったく違った大人びた表情が、穏やかに、丁寧にあたしに語りかけてくる。


「前にも言ったけど、おじさんたちと俺たちは違う。だから縁起なんて関係ない。この場所は俺たちの大切な場所で、今日は俺たちの特別な日だから、俺たちがここでキスするんだ」
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