ずっと恋していたいから、幼なじみのままでいて。
あたしの心からの言葉を受け止めた雄太が、見たこともないようなうれしそうな顔で笑った。


その一点の曇りもない笑顔を見たら、体の芯からさざ波のように幸福感が満ちてくる。


ねえ、雄太。幼い頃に大切だったこの場所も、あたしたちも、昔とはすっかり変わったね。


でもあたしたちは、あの頃のようにまたこの場所に立って、これから初めてのキスをするんだ。


決して壊れない、失われない宝物があることを知っているから。


守りたい。そして証明してみたい。


信じて前に進むことは無意味じゃないって。


無意味じゃないものにするために、人は前に進むんだって。


雄太と一緒なら叶えられる気がするよ。


なんの保証も確証もないけれど、きっと大丈夫。


だって雄太はあたしにとって大切な宝物だから。


「好きだよ、瑞樹。本当に心から瑞樹が大切で大好きだ」


見上げる雄太の顔がゆっくりと近づいてくる。


くっきりした二重瞼の、宝石みたいに澄んだ黒い瞳に見惚れて、あたしのすべてが引き込まれてしまう。


トクトク鳴り響く鼓動と、言葉ではとても言い表せない幸せな感情。


そしてあたしの手を包んでくれる、大きくて温かな愛情。


そっと両目を閉じて、なにも見えなくなっても、すべてが伝わってくる。


こんなにもあたしは雄太を好きで、雄太もあたしを好きってこと。


それ以上に大事で信じられることなんて、どこにもないってこと。


好きだよ、雄太。


あたしは雄太が大好きだよ。




そして次の瞬間。


あたしの唇は生まれて初めて、とても柔らかくて愛しい体温と触れ合った。





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