ずっと恋していたいから、幼なじみのままでいて。
「ふたりがくっついてくれたら、ダブルデートとか誘いやすいし。アテにしてるんだから協力してよ」


「そりゃ協力したい気持ちは山盛りだけど」


「甲斐君って瑞樹へのラブがダダ漏れじゃん。普段の態度見てればわかるよ。あれでただの“親愛”だったら逆にヤバイよ。距離感間違ってる」


「だって、昔からそれが普通だったもん。あたしたち」


「あんたらって普通に怖い」


「うん、怖い。この関係が変わっちゃったらって思うとすごく怖い」


少なくとも今、あたしは雄太から大事に思ってもらっている。


それがどんな感情にしろ、あたしのことを他の誰とも違う特別な居場所に置いてくれている。それは純粋にうれしいんだ。


だから、もしもあたしの気持ちを知られたとき、その場所にいられなくなるのが怖い。


予測不能な変化が不安なんだ。あたしはいつまでも雄太にとって、特別な存在でいたい。


この居場所を失いたくないんだよ。


「……まあ、瑞樹の今の状況を思えば、そう考えちゃうのもわかるけど、ね」


海莉が少し声のトーンを落として慰めるように言った。


「どう? お母さんは相変わらずなの? お父さんとはちゃんと会ってる?」


「あー、うん。まあ」


どう答えればいいか言葉に詰まって視線を揺らすと同時に、本鈴が鳴った。


「あ、席に座ろ。もう先生来ちゃう」


あたしはわざと明るい声で作り笑顔を浮かべながら、自分の席へと戻った。





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