ずっと恋していたいから、幼なじみのままでいて。
あ、いけない。つい話し込んじゃった。


そろそろ家を出ないと遅刻しちゃう。


「じゃあ行ってきます」


「行ってらっしゃい。雄太君によろしくね」


お母さんの声を背に、あたしは急ぎ足で玄関に向かった。


下駄箱から靴を出しながら、あたしと両親との関係もずいぶん改善したなあ……ってしみじみ思う。


親が離婚してからの方が家族仲がいいなんて、一般的には変な話なんだろうけど、実際にそうなんだから仕方ない。


あれからお母さんは、なにかが吹っ切れたようにどんどん落ち着いていって、あの痛々しい雰囲気はもうぜんぜんない。


お父さんも定期的に家まで会いに来てくれるし、一緒に外食したりもする。


二酸化炭素が沈殿したような我が家の空気は、最近ではすっかりクリーンになった。


本当によかったと思うと同時に、もしもあの日、雄太が家に来てくれなかったらと思うとゾッとする。


雄太にはいろんな意味で感謝しかないよ。


玄関のドアを開けて一歩外に出たら、上から押しつけてくるような直射日光が、全身に降り注いだ。


まるで空気全体が暖房されてるみたい。うわあ、今日も暑い!
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