ずっと恋していたいから、幼なじみのままでいて。
無意識に目を細めてしまうほど強い日差しが、街路樹の緑を照らしていっそう輝かせる。


アスファルトの上の日影を選ぶように歩きながら、あたしは待ち合わせの駅に向かった。


駅に着いて構内に入り、お土産物売り場の横にある広場へと進むと、木製のベンチに腰掛けている雄太を発見。


ほぼ同時にあたしを見つけて手を振っている雄太のもとへ近寄って、隣に座った。


「お待たせ雄太。……それで田中さんは?」


「さっき改札で見送ったよ」


「様子、どうだった?」


「うん。まあ、泣いてた」


実は今日は、田中さんの引っ越しの日なんだ。


いよいよお母さんと一緒に田舎に行くことになったって彼女から聞いて、あたしから雄太に見送りに行くように頼んだ。


それで駅で待ち合わせしたってわけ。


「瑞樹も一緒に見送ればよかったのに。会えなくて田中さん残念がってたぞ?」


「あたしも見送りたい気持ちはもちろんあったんだけどね」
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