ずっと恋していたいから、幼なじみのままでいて。
「さてと、そろそろ行くか」


ベンチから立ち上がった雄太を見上げながら、あたしはずっと聞きたかったことを聞いてみた。


「今日はあたしを案内したい場所があるって言ってたよね? それどこ?」


昨日の電話で雄太にそう言われてから、ずっと楽しみにしてたの。


だっていくら聞いても教えてくれないんだもん。


「もう教えてくれてもいいでしょ?」


「それは後で。まだ時間が早いんだ」


そう言いながらニヤリと笑う雄太に、あたしは小首を傾げる。


時間? なんだろう? 映画とか?


「いずれわかるから。まずはどこかで時間を潰そう」


雄太に促されてベンチから立ち上がったあたしは、一緒に駅の出入り口へ向かった。


一歩外へ出ると、午後の強烈な日差しが大通りに燦々と降り注いでいる。


目の前を行き交う大勢の人たちが、日傘を差したりシャツの襟元をパタパタしたり、扇で仰いだり。


アスファルトからユラユラ立ち昇る蜃気楼が、なおさら今日の暑さを強調している。


あたしたちはすぐ近くのビルに避難して、しばらく時間を潰すことにした。


軽食をテイクアウトして一緒に食べたり、本屋に入って雄太に参考書を選んでもらったり。


プチプラのコスメショップに付き合ってもらったりしているうちに、あっという間に時間が過ぎていく。
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