ずっと恋していたいから、幼なじみのままでいて。
「で、どこ行くの? まだ内緒?」


「内緒。着いてのお楽しみ」


ビルから連れ出されたあたしは、雄太に手を引かれながら大通りの曲がり角を曲がった。


時刻はそろそろ夕暮れ時で、傾いた太陽が、昼間の鮮烈さとは違った穏やかな色合いに町中を彩り始めている。


雄太はあたしを連れてそのまま道路を真っ直ぐ進み、どんどん大通りから遠ざかって行った。


あたし、ここら辺はほとんど来たことないや。


メインの通りから数本道を逸れただけで、ずいぶん静かになるんだなあ。


そんなことを考えてキョロキョロしながら歩いていたら、急に雄太が立ち止まった。


「瑞樹、着いたよ。ここ覚えてないか?」


「ん? どれ? ……あ」


ふたり並んで立つ目の前に、教会が建っている。


真っ白な西洋風の三角屋根と、てっぺんを飾る鐘。いかにも教会らしい教会で、言われてみれば重厚な木の扉に見覚えがあった。


「これって、あのときの教会じゃない!? あたしたちがフラワーガールとリングボーイをしたときの!」


あたしたちがまだ幼稚園だったときの、あの思い出の教会だ。
< 217 / 223 >

この作品をシェア

pagetop