ずっと恋していたいから、幼なじみのままでいて。
「よくここで祈ったよ。瑞樹が受験前に体調崩したときは、一刻も早く元気になりますようにって。瑞樹の両親の仲が元通りになりますようにって」


「雄太……」


「そして、いつの日か俺の想いが瑞樹に届きますようにって祈ってた」


その頃のことを思い出すように、雄太はゆっくりと目を閉じた。


特別な場所で捧げる、心からの祈り。


雄太はずっと前から、あたしの知らない所で、こんなにもあたしを想ってくれていたんだね。


ありがとう。本当に本当にありがとう。


ああ、どうしよう。うれし過ぎてせっかくの光景が涙でにじむよ。


あたし、泣きそうだよ雄太。


「叶う祈りもあれば、叶わない祈りもある。それはどうしようもない現実だ。でも俺は、この教会でお前を想って祈った時間のすべてを大切に思ってる」


雄太の唇から、思いのこもった言葉がこぼれる。


……うん。そうだね。望んだからって願いが叶うわけじゃない。


ダメなものはどうしたってダメだし、奇跡は簡単に起こらないから奇跡なんだってことを、あたしは学んだ。


それでもね、望むことは無意味なんかじゃない。


だってお父さんとお母さんが望んでくれて、あたしがこの世に生まれたんだもの。
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