ずっと恋していたいから、幼なじみのままでいて。
あたしのことを、決して壊れることもなく失われることもない宝物だと言ってくれた。


ならあたしも、恐れることなく望みたい。


雄太の存在と、あたしが雄太を想う心は、まぎれもない宝物だから。


「なあ、瑞樹。まだ俺には叶えたい望みがあるんだ」


両目に盛り上がった涙のせいで、雄太の顔がほとんど見えない。


でもあたしがグスグスと鼻を鳴らす音に混じって、雄太の声がしっかりと聞こえる。


「あの日に願った通り、いつの日かここでお前と結婚式を挙げたい」


雄太が、あたしと向き合い言った。


「どうか俺と一緒にお前も願ってくれ。瑞樹」


限界を超えた涙が、あたしの両頬を伝って流れ落ちた。


もう、なにも、声にならない。


心の中はただ熱いよろこびに満ちて、大好きな人の心と自分の心が結ばれていることの尊さを、ひたすらに思う。


雄太に向かってコクコクとうなずくたびに、涙の雫がポロポロとヒザに落ちた。


うん。一緒に願おう。


叶う保証のない祈りを、そうとわかったうえで、ここで捧げよう。


だってこれは誓いだから。


叶わない可能性があるからこそ、きっと叶えてみせると自分に強く誓うんだ。


それは愚かなことでも、無意味でも、無価値でもない。


雄太の祈りが、この奇跡の世界をあたしに見せてくれたんだもの。
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