ずっと恋していたいから、幼なじみのままでいて。
「え? 今日一緒に帰れるの?」


普段生徒会の活動をしている雄太とは、なかなか下校の時間が合わなくて、一緒に帰るチャンスはあまりない。


小学校も中学校も毎日一緒に下校してたのに、高校生になってからは数えるくらいしか一緒に下校していなかった。


「おう。先に教室行って制服に着替えて待ってろ。ちょっと美化委員長と話したら迎えに行くから」


「う、うん!」


うわあ、うれしい! 久しぶりに雄太と一緒に帰れる!


さっきまで文句タラタラだったあたしの気分は、おかげで一気に急上昇。


汚れたぞうきんを握りしめてニヤけているあたしを見て、雄太は笑いながら「じゃあ、後でな」と委員長の方へ歩いて行った。


ウキウキと掃除用具を抱え、みんなと一緒に学校に向かいながら振り向くと、雄太が委員長と話している姿が見える。


書類を片手に話し込んでいる表情はすごく大人びていて、さっき大笑いしていた子どもっぽい態度とは別人みたいだ。


……このギャップがまたカッコイイんだ。


話し相手を真剣に見つめるときの視線の強さとか、さ。


他の誰とも違う、雄太だけの魅力だと思うんだよね。


ほら、また胸の奥が、なにかスイッチが入ったみたいにポッと温かくなる。


この素敵な人が、あたしの幼なじみ。そしてあたしは、そんな雄太の幼なじみ。


言葉にできない不思議な満足感を抱えながら、あたしは校舎に入って自分の教室に向かった。
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