ずっと恋していたいから、幼なじみのままでいて。
「自分を責めるのはやめろよ」


雄太が静かに、でもハッキリとした声で言う。


「こういうことって誰が悪いわけでも、誰の責任でもないだろ。それにお前はちゃんと頑張っていたろ?」


「べつになにも頑張ってなかったよ。なーんもできなかった」


「いや、お前は頑張ってた。ちゃんと学校に行って、勉強して、家事も手伝って、高校にも進学した」


「それ普通のことじゃん」


「違う。苦しいときに“普通”に過ごすことはぜんぜん普通のことじゃない」


そう言いながら何度も首を横に振る雄太の前髪が揺れる。


整った顔を夕日が照らして淡い影を作り、いつもと少し違う雰囲気に目が惹きつけられた。


雄太、すごくきれい……。


「お前は歯を食いしばって、親のためにせめて自分だけでもいつも通りでいようと努力してた。俺、知ってる」


赤信号の横断歩道の手前で立ち止まり、雄太はあたしと真っ直ぐ向き合った。


そしてあたしの頭の上に、ポンと右手を乗せる。


「俺はちゃんとわかっているよ。瑞樹」


耳に優しい低い声が、行き交う車の音に紛れることなく心に届いた。
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