ずっと恋していたいから、幼なじみのままでいて。
あたしを見つめる雄太の肩越しに見える空も、雲も、鮮やかな朱色に染まっている。


辺りの空気も優しい黄昏色になって、向かい合うあたしたちをすっぽり包み込んでいる。


でもあたしは、どんなにきれいな空も雲も目には入らなかった。


雄太から一瞬も目を逸らすことができなかったから。


その瞳の強さに、ただ心を奪われていたから。


慰めるような雄太の手が頭の上でポンポンと動いて、その手の重みが、大きさがうれしくて、両目がジワリとにじむ。


「ありがと……。雄太」


雄太はいつも優しい。


いつもあたしを認めてくれる。支えてくれる。守ってくれる。


すごくうれしいよ。でも、すごく切なくもあるんだよ。


だってそのたびにあたしは、どんどん雄太を好きになっていくから。


いつかこの気持ちを抑えきれなくなりそうで、気づかれてしまいそうで、ちょっぴり怖いよ。


「お前さ、俺の前では強がったりしないで素直に泣けよ。ちゃんと受け止めてやるから」


あたしの気持ちを知らない雄太が、ニッと笑って、またそんな好きになってしまいそうなセリフを言うんだ。


「さあ、今すぐ俺の胸に飛び込んでこい。俺はいつでも準備オーケーだ!」


雄太がガバッと両腕を広げて、おどけた表情を見せた。


洟を啜っていたあたしは思わずブッと吹き出す。


やだもう雄太ってば。それはさすがにちょっとドラマチックすぎ。


「謹んでご遠慮申し上げます」


「うおぉ! 丁重にお断りされてしまった!」


あたしと雄太は、一緒になってカラカラと笑い声を上げた。
< 33 / 223 >

この作品をシェア

pagetop