ずっと恋していたいから、幼なじみのままでいて。
ちょうど信号が青に変わって、雄太が横断歩道の先を向く。


「じゃ、また明日な」


「うん。また明日」


雄太の家は横断歩道を渡った向こう側にあるから、ここでお別れ。


笑顔で手を振るあたしの心は、さっきと比べると嘘みたいに軽くなっていた。


これも雄太のおかげ。雄太は子どもの頃からあたしの心を癒す名人だ。


バイバイするのは寂しいけれど、『また明日』って言い合えることに感謝だ。


だってバイバイは、明日もあたしの隣にいてくれる約束なんだもの。


「お前って泣き顔もかわいいけど、やっぱ笑顔が一番かわいいな」


「え?」


急に雄太の右手が伸びてきて、キョトンとしているあたしのホッペのお肉を優しくつまんだ。


……え? え!?


不意打ちで頬に感じた指の体温と、あたしを見つめる雄太の瞳の甘い輝きに、一瞬で心を射貫かれて棒立ちになる。


「この笑顔を守るためならなんだってするから、もっと俺に甘えろ。俺、お前に甘えられるの好きなんだ。お前にとって俺が一番なんだって優越感を感じられてさ」


――ドキン……!


心臓が破裂しそうになるのと同時に、雄太の手がホッペから離れていった。


「ま、俺にとってもお前が一番大切な女だけどな。……特別な意味で。じゃあな、鈍感女」


軽く手を上げ、雄太が横断歩道を歩き始める。


背の高い背中を見つめるあたしの胸は、ドキドキがどこまでも加速して今にも飛び出しそう。
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