ずっと恋していたいから、幼なじみのままでいて。
ねえ雄太。今の言葉の意味って……?


顔、すごく赤かったのはあたしの見間違い? それとも夕日のイタズラ?


それとも……?


声にならない問いかけも、雄太の後ろ姿も、夕日に染まった町の中に紛れていく。


淡い金色の光。朱と藍色が混じる空と雲。


黄昏色のビルの群れと、歩道を行き交う見知らぬ人たち。


まるで切り取られた一枚の写真のような景色の中で振り返り、あたしに向かって手を振る人。


あたしの、大好きな人……。


歩道を挟んで向き合い、手を振り返しながら、どうしようもないくらい雄太への感情が膨れ上がる。


いくらでも大きくなるよ。どんどん熱くなって、もう止まらないよ、雄太。


もっと雄太に寄り添ってもいいの?


もしかして、この気持ちを伝えてもいいの?


絶対に無理だと思っていた一歩を、踏み出してもいいの?


勇気を出して告白したら、あたしたちの未来は変わるって希望を持ってもいいの?


ドキドキする熱い胸の中で、そんな期待と夢が入り混じる。


頭上を通り抜ける風に吹かれた木々の葉が、さわさわと小さな声を立て始めてる。


あたしは一歩も動けないまま、もう見えなくなった雄太の姿をいつまでも目で追い続けていた。




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