ずっと恋していたいから、幼なじみのままでいて。
「どうしたの? 今日も来てたの?」


そう話しかけながら、自分の声が少し弾んでるのがわかった。


だって家に帰ってくる回数が増えるのっていいことじゃない?


もしかしたら、お父さんとお母さんの関係がだんだん修復されてきているのかも!


「あ、ああ。お母さんに話があってな」


その言葉を聞いて、あたしの心はますます明るくなった。


お母さんと話したの? これまでお父さんが帰ってきてもあたしとばかり話していて、その間お母さんはそばにも寄ってこなかったのに。


うわあ、これってやっぱりいい方向に進んでいるんじゃない? 期待しちゃう!


ん? あれ? でもお父さん、今家から出る所だったんだよね?


せっかく来たのに、あたしには会わずに帰るつもりだったってこと?


「あの、瑞樹、じゃあお父さん今日はこれで帰るから」


そう言ってドアから出てきたお父さんは、硬い表情であたしの横をすり抜けた。


あたしとは目を合わせようとしないその様子に、それまで浮かれていた気持ちに急に暗い影が差す。


……なにか、変だ。
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