ずっと恋していたいから、幼なじみのままでいて。
バクンと心臓が痛んで、あたしは反射的に壁のスイッチを押して電気を点けた。


この目の前の重苦しい光景に、せめて救いが欲しいと思って。


部屋の中がパッと明るくなって、お母さんがビクリと背中を震わせながら身を起こす。


「お母さん」


自分でもびっくりするほど声がかすれて、あたしは反射的にゴクリと唾を飲み込んだ。


「今そこでお父さんと会ったよ」


「……そう」


お母さんの声はこれまで聞いたこともないような鼻声でガラガラだ。


よほど長い時間、泣いていたんだろう。


「お母さん、どうかしたの?」


本当はなにも聞きたくなかった。


でも聞かずには済まないくらい、お母さんの顔は涙でグチャグチャだ。


瞼がひどく腫れて、目の周りも鼻の頭も真っ赤。そしてすごく苦しそうに息を吐きながら声を出す。


「お父さんから、もうなにか聞いたの?」


「ううん。お父さんなにも言わなかった」


「……そう。あの人、つらいことはすべて私に押しつけるつもりなのね」


唇の端を歪ませて、お母さんは涙をこぼした。
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