ずっと恋していたいから、幼なじみのままでいて。
「瑞樹、聞いてちょうだい。お父さんとお母さんね……」


嫌だ。


とっさに心が叫んだ。


嫌だ。嫌だ。嫌だ。


なにも聞きたくない。お願い。お願いだからどうか、このままなにも知らないまま……!


「お父さんとお母さんね、離婚することになったの。ごめんね」


ああ……!


足元に静かな爆弾を落とされたような気がした。


全身に『絶望』っていう名前の衝撃が走って、細胞が悲鳴を上げる。


心臓は騒々しいくらいに動悸を打って、あたしの中の大切な物がガラガラ崩壊していくのに、部屋の中は嘘みたいに静まり返っているのが不思議だった。


「……どう、して?」


どうにか声を絞り出すあたしの目に映るのは、ソファーの向こうの壁紙に記された、黒くて短いライン。


まだ小さかった頃、お父さんとお母さんが毎年あたしの誕生日の記念に、身長を測って印をつけてくれた。


笑顔だった。


間違いなく、記憶の中ではみんな笑顔だったのに。


「どうして離婚するの? もう好きじゃないの?」


声は震えているけれど、なぜだか涙は出てこない。


今のこの状況を信じ切れなくて、まだ受け止めきれないから。


『こんなの嘘だ』って悪あがきしたい。
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