ずっと恋していたいから、幼なじみのままでいて。
この沈黙が、逆に雄太があたしの悲しみや苦しみを理解してくれてる証のようで、慰められた。


しばらくそうしてお互い黙りこくった後、ようやく雄太が遠慮がちに話し始める。


『俺、本当は今すぐお前ん家に行きたい。けど……』


『うん。わかってる』


いくらあたしのことを心配していても、いくら家族同然だからといっても、こんな大変な状況のよその家庭にノコノコ乗り込んでくるようなことはしない。


雄太は、そういう冷静な線引きがちゃんとできる人なんだ。


「今日はあたしも頭の中がごちゃごちゃだから。明日、話を聞いてくれる?」


『もちろん』


「ありがとう。電話うれしかった。それじゃまた明日ね」


『ああ。また明日』


あたしは電話を終えて、スマホを眺めた。


本当にありがとう雄太。本当に本当にありがとう。


雄太の声の名残りを求めてスマホを胸にギュッと押し当てたら、ほんの少しだけ気が楽になった。
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