ずっと恋していたいから、幼なじみのままでいて。
海莉はあたしの手首をグイグイ引っ張って、中庭の方へ連れて行く。


うちの学校の中庭は、そんなに広くないけど桜の木や藤棚や小池なんかがあって、ちょっとした和風庭園だ。


昼間はお弁当を持った生徒たちがたくさん集まるけれど、朝のうちは静かな場所で、ちょうど今は誰もいなかった。


ベンチ代わりの大きくて平らな庭石に海莉と並んで腰かけ、あたしは昨日のことを洗いざらい打ち明けた。


「そっか……。ついにそうなっちゃったか」


真剣な表情で聞いていた海莉は、ぜんぶ聞き終えてからポツリと言った。


両親が別居していることはよく相談していたし、励ましてくれていたから、すごく残念そうだ。


「本当は学校休みたかったんだけど、そうも言ってられなくて来たの」


「学校には病気の出席停止制度とか、忌引きとかの制度はあるけど、親が離婚した際の心のケア制度なんてないもんね」


「うん。インフルエンザなんかより、よっぽどそっちの制度を実地してほしい」


海莉は心配そうな表情で、何度もあたしの背中を撫でてくれる。


その優しい手の動きにホッと心が緩んで、また涙が滲んで中庭の花壇がぼやけて見えた。
< 51 / 223 >

この作品をシェア

pagetop