ずっと恋していたいから、幼なじみのままでいて。
「甲斐はもう中にいるはずだよ。じゃあ俺、務めは果たしたから帰るわ。中に入ったら誰も入り込まないように扉にカギかけろよ?」


「はい。ありがとうございました」


渡り廊下を歩いて行く生徒会長の後ろ姿を見送ってから、あたしは体育館の扉を開けた。


中に入って言われた通りにカギを回し、周りをキョロキョロしたけれど、誰もいない。


雄太、どこかな? 姿が見えない。


考えてみたら、こんなにひと気のない体育館なんて初めてだ。


いつもあんなに騒々しい体育館が、物音ひとつないなんてちょっと変な感じ。


ステージも、二階のギャラリーもシーンと静まり返ってる。


音がないってだけで、バスケットのゴールポストや、ステージの横に飾られている校歌の額縁までもが、いつもと違った印象に見えるもんなんだな。


ガラーンとした体育館と、この静けさに少し不安になりかけたとき、とつぜん聞こえてきた声に驚いて跳ね上がった。
< 63 / 223 >

この作品をシェア

pagetop