ずっと恋していたいから、幼なじみのままでいて。
まるで、ふわふわの雲の上を歩いていた次の瞬間、現実という下界に一気に叩き落された気分になる。


急激に下がっていく体温と、さっきまでとは違う鼓動の乱れを感じながら、あたしは顔を強張らせた。


幼なじみの終わり?


そして恋人同士の始まり?


‥‥‥違う。


それは『終わり』の始まりだ。


雄太は知らないんだ。幼なじみの関係を手放して、恋が始まったら、終わりの可能性まで手にしてしまうことを……。


「ダメ、だよ」


顔を引き攣らせたまま、あたしは窓に向かって首を横に振った。


ごめんなさい雄太。ごめんなさい。


でも、あたしは知っているの。


恋の終わりの無惨さを知ってしまったの。


「ダメなんだよ。ダメなの」


『瑞樹?』


「雄太の告白、どうしても受け入れられないの」


『瑞樹、俺……』


「お願いだから黙って聞いて! あたしは……!」


『瑞樹、悪いけど俺ブースの中だから、さっきからお前がなに言ってるのかぜんぜん聞こえないんだ』


「だったら早くそこから下りてきて!」


床をダンッと踏み鳴らして叫ぶと、『怒んなよ。今そっち行くから待ってろ』って声が聞こえた。
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