ずっと恋していたいから、幼なじみのままでいて。
ま、まったくもう! ふざけないでよ!


あたしひとりでバカみたいじゃん!


口の中でブツブツ文句を言っているうちに、少しだけ冷静な気持ちを取り戻せた気がする。


でもステージ横のドアから出てきた雄太が、真っ直ぐこちらに向かって歩いてくるのを見て、また胸がざわめきだした。


いつもの雄太だけど、いつもの雄太じゃない。


彼は、あたしのことを好きだと告白した雄太。


姿形はなにも変わらないのに、決定的に変わってしまった。


ほら、あの目が。


あたしを見つめる目に込められた気持ちが、違う。


その視線の強さと熱さに耐えかねて、あたしはクルリと背中を向けた。


「おい」


「…………」


「こっち向け」


「やだ」


振り向くことなんてできない。


『好きだ』って告白してきた男の子と顔を見合わせるなんて。しかもそれが、自分も好きな相手なんて。


恥ずかしすぎるよ、それ。


だってあたしたち、恋してる


その感情をむき出しにしてお互い向き合うなんて、無理。


「お前の声は聞こえなかったけど、ジェスチャー見てたらなんとなくわかった。なんで断るんだ?」
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