ずっと恋していたいから、幼なじみのままでいて。
「この手を放して。雄太」


小さな世界に閉じ込めようとする両腕の中で、あたしはもがいた。


「あたしを守ると言うなら、どうか言葉通りに守って。幼なじみとして、一生そばで」


わかっているでしょ? 昨日、あたしの家族が崩壊したの。


ずっと手の中にあると信じ切っていたんだ。一瞬の疑いもなかった。


だってお父さんも、お母さんも、昔は心から笑い合っていた。


心から想い合っていて、間違いなく信じ合っていた。


なのに、それはあっけなく終わった。そして終わってしまえばもう二度と元には戻らない。


泣いても、叫んでも、なにをしてもどうしても、絶対にあの大切な日々は帰らないの。


だからもう、これ以上は嫌だよ。


信じていた日々を、かけがえのない存在を失うのは嫌なんだよ。


これ以上は1ミリだって耐えられないんだ。


雄太まで失ったらって思うと、本当に冗談じゃなく気が狂いそうになる。


ほら、考えただけでまたこんなに涙が溢れてくるんだよ。


嫌なの。嫌なの。いつか雄太にまで裏切られて、捨てられる日が来たらと思うと……。


「怖くて怖くて、怖くてたまらないんだよ!」
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