ずっと恋していたいから、幼なじみのままでいて。
あたしの悲鳴が静かな体育館に響き渡った。


驚いた雄太が腕の力を緩めた一瞬の隙に、あたしは強引に腕を振りほどいて走り出す。


「瑞樹!」


「お願いだから来ないで! お願いだからもうこれ以上あたしを苦しめないで!」


あたしを追いかけようとする足音がピタリと止まった。


あたしは無我夢中でドアに飛びつき、カギを開けて、体育館から必死に逃げ出した。


後ろから雄太が追いかけて来る気配はない。


わかってる。きっと雄太は追いかけてきたりしない。


雄太なら、あたしをこれ以上追いつめるようなことは絶対にしないから。


知っているのに、あたしはいったい、なにから逃げているんだろう。


近くの階段を全力で駆け上がり、息を切らして、ひと気のない調理室に飛び込んだ。


そしてあたしは調理台の下の狭いスペースに潜り込んで、小さく丸まって、声を殺して泣いた。


「ふっ……う、えぇー……」


まるで怯える子どもみたいだ。


無力な子どもは、自分の力じゃどうにもできない現実を前にして、メソメソと泣くしかない。
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