ずっと恋していたいから、幼なじみのままでいて。
ヒマワリみたいな笑顔
「……ところで瑞樹、この一週間で痩せたね」


ベッドの上に仰向けになってウトウトしていたあたしの意識が、海莉の声で戻った。


いつの間にか顔の上に被さっていた教科書を持ち上げると、自分の部屋とは違う天井の木目模様と、薄いグレーの壁紙が見える。


あたしは勉強机に座っている海莉の方を振り返って、ちょっとかすれ声で返事をした。


「なんか言った? 寝てたから聞こえなかった」


「寝てたんかーい。今までの会話はずっとあたしの独り言か。むなしー」


「ごめん。最近あんまりよく寝られなくてさ」


ここは海莉の家の、海莉の部屋。


学校が今日からテスト期間に突入して、午前で下校したその足で、海莉の家にお邪魔した。


自分の家には、どうしても足が向かなかったんだ。


海莉のベッドを占領して寝そべりながら歴史の年表を暗記してるうちに、寝ちゃったみたい。


「相変わらず、家全体が暗いオーラに覆われてるカンジなの?」


「うん。空気が暗くてズシンと重い。酸素じゃなくて二酸化炭素を吸ってるんじゃないかってくらい息苦しいよ」


「そっか。おばさんも大変だけど瑞樹も大変だよね」


べつに離婚が決まったばかりのお母さんに、明るい爽やかな空気を振り撒け、なんてムチャを言う気はない。


でも、あたしの前で必死に普段通りにしようとしてる姿が、どうにも……。


『私、本当は辛いけど、娘の前では笑顔でいなきゃ!』感が滲み出ていて、余計に痛い。


無理しなくていいのに。


そんなお母さんに合わせて一緒にニコニコするのもわざとらしいし、どんな顔して対応すればいいのかわからない。


とてもじゃないけど、家に喜んで帰る気にはなれない状況だ。


そんなあたしの気持ちを察した海莉が、一緒に勉強しようって誘ってくれたんだ。
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