ずっと恋していたいから、幼なじみのままでいて。
後輩の女の子
海莉がごちそうしてくれたケーキで、カロリーとビタミンをいっぱい摂取したおかげか、テスト期間を無事に乗り切ることができた。


結果は……まあ、あたしも海莉も赤点はないと思う。あくまでも希望的観測だけど。


「でも正直、日本史はヤバいかも。歴史って大嫌い」


校庭に設置されたテントの下に長テーブルを準備しながら、海莉がゲンナリする。


あたしもパイプイスを運んで並べながら、心から同意した。


「あたしも暗記系は苦手。海莉って理系はすごく成績いいのにね」


「とにかく日本史でわかんなかった所は、ぜんぶ『徳川家光』って書いて埋めておいた。そう書いておけば、どうにかなるような気がするんだよねえ。困ったときの『徳川家光』だ」


「……なんで家康じゃなくて、孫の家光?」


いや、べつにどっちでもいいんだけど。


単純に疑問に思って聞いてみたら、予想外の返事が返ってきた。


「家康嫌い。中学のときのテストで、家康の『康』の漢字を書き間違えてバツくらって、赤点になったから。あのときの恨みは今でも忘れない」


「それ、恨みのホコ先間違ってない?」


どっちかっていうと、家康さんじゃなくて先生を恨むべきだと思う。


って言うか、漢字間違えたのは海莉なんだから、誰も恨む筋合いではないような?


そんなどうでもいいことを思案しながら見上げる空は、雲ひとつない青空。


本日はまさに運動会日和だ。
< 94 / 223 >

この作品をシェア

pagetop