ずっと恋していたいから、幼なじみのままでいて。
一瞬、胸がトクンとした。


『ちゃんと見てた』って、笑顔で言われたことがうれしくて。


心がほんわり温かくなって、くすぐったい。


そんなあたしの気持ちを知らない雄太が、ちょうど空いている隣の席に座って、また話しかけてくる。


「で、調子はどうだ? 最近忙しくて顔出せなくてごめんな」


忙しかったのは本当だと思う。


でも雄太が顔を見せなかったのは、あたしのせいだ。


あんな捨てゼリフを吐いて逃げ出したあたしに、気を使ってくれたんだ。


なのに雄太は自分が謝る。


いつだってそういう人なんだ。


そういうところが、昔からあたしは……。


「海莉ー、頑張ってー!」


クラスメイトの声援にハッとして、あたしは雄太から校庭の方に目を向けた。


「あ、雄太見て! 海莉が借り物競争に出てる!」


「おー。高木、頑張れー!」


用紙が置かれている場所まで全力疾走した海莉が、手近な紙を拾って開いた。


かと思ったら、周りをキョロキョロ見回しながら、困った顔で突っ立っている。


紙に書かれてる物が見つからないのかな?


運営委員の人、たまにウケ狙いで変なこと書いてたりするからなぁ。


そこが面白くて、この借り物競争は人気種目なんだけど。


「海莉、どうしたの⁉︎ 急いで!」
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