あまいあまい、チョコレートあげる
「え、えっと……」
視線をぐるぐるさせながらあたふたする、真っ赤な蘭は……背が高くて美人なイメージから一変、あまくてキラキラした可愛い子そのもの。
「どうなの~?」
再度訊くと、「内緒!」と言って、唇に人差し指を近づける。
小首をかしげる姿が、あたしには真似できない可愛らしさをまとっていた。
えーっ、教えてよ。
そう言おうとしたとき、教室のドアから「おーい」と噂の彼の声がとんできた。
「真端、どこ行ってたんだよ。
飯食おうぜ!」
「あっ、有村!」
ぱあっと花を咲かせる笑顔を浮かべて、蘭は声をあげる。
「いってらっしゃーい」
幸せそうな彼女に手をふると、蘭は両手を顔の前で合わせて、頭を下げた。
気にしないで、いちゃいちゃするなり、いつもどおりに喧嘩するなり、したらいいのに。
バレンタインが近いんだから、どんなチョコレートが好きか質問してみればいいのに。