君の言葉は私を刺す
後ろ姿が忘れられない。




気をつけてと言った言葉が私の頭を支配する。




初めてのこの感情に、今の私は名前をつけることが出来ない。




それから、ギターケースを持って家に帰ってきた。




でも、その間もあの男の子が気になって、ボーッとあの後ろ姿を思い出す。




「冬羽?どうしたの?」




「えっ!?なにが!?」




夜ご飯の準備を手伝っていると、おばあちゃんが野菜を切りながら言った。




「ぼーっとしてるけど。熱中症にでもなった?」




「ううん!大丈夫!海が綺麗で本当に感動したの。」




「そっか。気に入ってくれて良かったわ!」




その時、玄関から男の人の声が聞こえた。




「多分おじいちゃんよ。行ってきてくれる?」




私は玄関まで早歩きで行くと、そこに麦わら帽子を被ったおじいちゃんらしき人が。




「あー、疲れたー、って、冬羽か?」




「うん。お邪魔してます。」




私が頭を下げると、




「おぉーー!会いたかったよ!!おっきくなったなー!」




そう言って私の頭を撫でる。




大きな手がなんとなくお父さんみたいだった。




でも、漁師をしているからかゴツゴツしている。




「これ、今日取れた大物だぞ!さっき捌いてきたから、そのまま食べられるぞ。」




そう言ってマグロの刺身を受け取る。




こんなにたくさんの刺身は見たことがない。



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