わたし、BL声優になりました
 ラジオ放送終了後。

 リスナーたちは黒瀬の言葉に疑問を覚え、SNS上では様々な憶測が飛び交い、ファン同士の衝突が起こる騒動にまで発展していた。

 翌朝になってもその勢いは止まらず、ネットニュースの見出しには『黒瀬の衝撃止まず!』と題された記事がさらに波紋を広げる。

 事務所の電話は鳴り止まず、赤坂のみでは対応が追い付かなくなり、田中社長自らも電話を手に取り対応に追われていた。

「──で、白石くんは何処に行ったのかな?」

 受話器を置いて、田中は赤坂に問いかける。
 
 そう、この数時間の間に、問題がもう一つ浮上していた。

 ゆらぎの姿が見当たらないのだ。

 赤坂が彼女に連絡を入れても、携帯の電源を落としているのか、機械アナウンスが流れるばかりだ。

「もう、終わりです。社長」

 項垂れた赤坂の瞳に前髪がかかり、表情が見えなくなる。田中は、その横顔を見つめ、言葉をかける。

「弱気になるのはまだ早いよ。僕だってこのままで終わらせるわけにはいかない」

 珍しく苛立ちを露にした田中は、拳でデスクを叩いた。
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