わたし、BL声優になりました
 私はさゆがその仕事を受け入れたのだとばかり思っていた。でも、本当は苦悩していた。

 どうして、寄り添えなかったのか。
 自分だけが苦しい思いをしているわけではなかったのに。

「……ごめん」

「謝られても不快なだけだわ」

 さゆは順風満帆に見えた私を潰すことで、自身の心の均等を保とうとしていたのかもしれない。

 一度違えてしまった道はそう簡単には交わらない。

「私が事務所を辞めて、この業界から身を引いたら、さゆは満足?」

 気が立っている相手にこんな言葉を投げ掛けても、無意味かもしれない。むしろ、さらに逆上させてしまうかもしれない。

 それでも、私はさゆの本音が知りたかった。

「……」

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