わたし、BL声優になりました
「正直、よく分からないです」

「うん。いいよ。これから好きになってもらえれば、それで。強引で俺様タイプの黒瀬より、僕のほうが絶対いいに決まってる」

「どう考えても、裏表をしょっちゅう使い分けてる緑川なんか信用出来ないだろ」

 再び二人の言い争いが始まり、この状況をどう納めればいいのか、ゆらぎは分からないまま静観していた。

「──とりあえず、一旦休戦だな」

 数分後。黒瀬の一言で討論は一時休戦となったが、両者の意見はお互いに譲る気はないらしい……。


 その後。結局、ゆらぎは黒瀬に連れられて事務所に戻ることとなり、緑川のマンションを後にした。

 タクシーの車内では、お互いに無言で言葉を交わすことがないままに事務所に到着する。

 数日間、事務所に立ち寄らなかっただけなのに、ビルを見上げた途端、ひどく安堵した。

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