わたし、BL声優になりました
「お前、どうせ何も食ってないんだろ。あ、ビール持ってくればよかった」
 
 ぶつくさと言いつつも、黒瀬は我が物顔でソファに座ると、自分の分の唐揚げを頬張り始めた。

 ……そして、騒ぎ始めた。

「うわっ! これめちゃくちゃ辛いぞ! 水! 水!」

「え! 水、水」

 急かされた、ゆらぎは冷蔵庫からミネラルウォーターを取り出し、辛さに悶絶している黒瀬に差し出した。

 ペットボトルの水をあっという間に半分ほど飲み干したところで、辛さが落ち着いたのか、黒瀬は息をついた。

「……悪い。こんなに辛いやつだとは思わなかった。さすがに食えな──」

「……ん? 美味しいですよ、この唐揚げ」

 そう言いながら、ゆらぎは黒瀬が悶絶していた激辛の唐揚げを、普通に食べていた。

 辛さを我慢している風もなく、かといって演技をしているわけでもなさそうだ。

「はあ? 嘘つくなよ。辛すぎて味なんて分からないって」

 黒瀬は、あまりにも平然と食べているゆらぎの姿に触発され、もう一度唐揚げを食べたものの、やはり……。

「げほっ! やっぱり、辛いじゃないか! なんで、食えるんだよ」

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