わたし、BL声優になりました
「……無理して返そうとしなくてもいいよ。彼女を僕に譲ってくれるなら話は別だけど」

「それは出来ない」

 意地の悪い笑みを浮かべた緑川の提案を、黒瀬は即座にはね除ける。

 隙有らば、ゆらぎを狙う緑川の肉食振りに、少し焦燥感を覚えなくもない。ここまで、はっきりと相手に好意を示して、恐れずに尚且つ積極的に行動出来る人は、きっと多くない。

 狙った獲物は逃がさない、か。

 恋敵だが、その姿勢は見習いたいと思う。

「本題に入ろうか。黒瀬は僕に何を望んでるの。言っておくけど、僕は権力があるわけじゃない。出来る事は極僅かに限られてるよ」

「分かってる。俺が頼みたいのは……」




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