わたし、BL声優になりました

 黒瀬が緑川に頼んだこと。それは、冬馬さゆの事務所移籍の打診だった。

 幸いにも写真の流出はまだない。

 一縷の望みを賭けて、黒瀬は緑川に無理を頼んだのだ。

「それは……出来ないよ」

 黒瀬の提案を聞いた緑川は、表情を曇らせた。

「分かってる。けど、相手の要求は事務所移籍だ」

 もう、一刻の猶予も残されてはいない。

 自分はまだいい。けど、彼女の声優人生まで潰したくはない。だから、どうにかして、この状況を食い止め、打破したい。

 沈黙が部屋の空気を重苦しくさせる。

 互いに口を閉ざし、思案してる最中、しんと静まりかえった部屋に、突然鳴り響いたのは黒瀬の携帯の着信音だった。

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