わたし、BL声優になりました
「社長! どういうことだ! 白石を辞めさせたのか」
黒瀬は荒々しい態度で社長室のドアを開け、良く通る声で言葉を紡ぐ。
「っ! セメルくん!? ……田中社長ならここにはいませんよ」
分厚い書類の束を何冊も抱えて、驚きの表情を浮かべているのは赤坂だった。
詰め寄る黒瀬から逃れるように、赤坂は背を向ける。黒瀬は、その左肩を無遠慮に掴むと、凄みのある声で問う。
「もう一度聞く。社長はどこだ。白石をどこへやった?」
赤坂は黒瀬の剣幕に、気付かれないように小さく諦念の息を洩らす。
「私からは何も答えることは出来ません。……ただ、社長は……お二人の為に奔走しています」