わたし、BL声優になりました
「あら、とても素敵よ。ゆらぎちゃん」
美容室の鏡越しに相手に微笑まれ、ゆらぎは心臓は激しく鼓動する。
「と、とんでも……ない……です」
嬉しさか、恥ずかしさか。やっとのことで、ゆらぎは俯き答えるも、その語尾は殆ど消えかけていた。
何故なら、今、彼女の目の前にいるのは、憧れのあの人。
──九十九院トキだからだ。
どうしてこんな状況になっているのかというと、ゆらぎの男装の為に切り揃えていた髪は、今では中途半端に伸びて、少し野暮ったい雰囲気になっていた。
そんな彼女を見かねて、九十九院はゆらぎを美容室へと連れてきていたのだ。