わたし、BL声優になりました
 有無を言わせない九十九院の言葉だったが、独りになる寂しさを感じていたゆらぎにとって、心に染み入るその優しさは、普段固く閉ざされていた涙腺を、意図も容易く崩壊させた。

 なんで私なんかに、こんな良くしてくれるんだろう。

 そんなゆらぎの心を見透かしたように、九十九院は言葉を続けた。

 『それに、こうなったのはバカ弟のマネジメント不足、経営者としての不測の事態を想像出来なかったことが原因でしょう? なら、姉の私が責任をとるわ。銀次には色々と言いたいことが山程あるもの。ねぇ? 銀次』

 『……返す言葉もございません。元はと言えば、僕が白石くんを男性声優として育てようとしたことが原因だ。君を女性声優として売り出していたら、こうはならなかったと思っている。本当に申し訳ない』

 田中社長に深々と頭を下げられ、ゆらぎは酷く動揺していたのを、今でも覚えている。

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