わたし、BL声優になりました
 どいつもこいつも。

 苛立ちを制御出来ず、握り潰した空のペットボトルを壁に叩きつける。

 乾いた音を立てて、ペットボトルは床に落下した。自暴自棄を自覚している黒瀬は呟いた。

「……こんなんじゃ駄目だな」

 あの時、強引にでも引き留めて、白石を自分のものにすれば、こんなことにはならなかった?

 それじゃ、あいつの思いはどうなる?

 あいつの感情を無視してまで、自分のものにしたところで、そんなのはただの自己満足だ。

 白石の本当の気持ちを聞かなければ意味がない。

 最初から分かっていた。

「あいつに会いたい……」

 明かりを消した部屋で、黒瀬は壁に寄りかかり、静かに独りごちた。


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