わたし、BL声優になりました
「そろそろ準備が出来そうよ。銀次」
行きつけのバーで、九十九院はカクテルを片手に、A4サイズの茶封筒を銀次に手渡した。
「ああ、ありがとう。助かったよ、本当に」
銀次は数枚の書類を取り出し、内容を確認する。
「うん。じゃあ後はサインをして終わりだね」
「名前はどうするの」
「もう決めてあるよ」
「今はまだ言わないのね」
九十九院はカクテルに口をつけようとして、止める。
「まあ、門出だからね」
「そう」
今日の九十九院はやけに口数が少ない。
カクテル程度で酔う彼女ではないが、何か思うことがあるのかもしれない。