わたし、BL声優になりました

「少しだけ二人きりにしてあげよう」

 微笑み、気を利かせた田中社長がそういうと、黒瀬と白石を残して、赤坂、九十九院も部屋を出ていく。

「…………」

「…………」

 ゆらぎは入り口で立ち尽くしたまま、その場を動こうとはしない。もしかしたら、彼女も気が動転していたのかもしれない。

「……髭、剃ってくればよかった」

 独り言と共に、この静寂を破ったのは黒瀬のほうだった。

「え?」

「てか、本当に白石なんだよな?」

 ぽかんとしているゆらぎを一瞥し、顎を片手で隠すように覆ったまま、再度確認をする。

「はい」

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