わたし、BL声優になりました
「ちなみにですが、セメルくん。明日のスケジュールは覚えていますか」
「当たり前だろ。午前に雑誌の撮影とインタビューが三件。午後にラジオの収録」
「……すごい」
スケジュールの内容を聞いて、思わず声が出てしまう。
そして、何よりゆらぎが一番驚いたのは、黒瀬が何時にどの雑誌から、取材を受けるのかを詳細に記憶していることだった。
普段の私生活から、黒瀬には勝手に不真面目な印象を抱いていたが、仕事に対しての真摯な姿勢に感心した。
雑誌の撮影が一日に三件も有るとは、本当に人気なんだ。
多分、他にも色々撮影とかが詰まってるんだろうな。
私ならインタビューを受けても、全部同じことを答えそうだ。見習わなければ。
「あ、白石のスケジュールってどうなってんの?」
「オレですか?」
不意に問われ逡巡する。
脳裏に浮かんだスケジュールボードは真っ白。
つまりは何も予定は無いということだ。
「セメルくん、白石くんを巻き込まないでくださいよ」
「いや! まだ何も言ってないから! 赤眼鏡は俺に一体どんな悪感情抱いてんだよ」
「いえ、悪感情は抱いてませんよー」
棒読みの赤坂に負けじと黒瀬も反論する。
お陰で車内は騒がしくなり、ゆらぎは頭痛を覚えて額《ひたい》を押さえる。
この二人は良いコンビなのか。
それとも、良くないコンビなのか。
いや、長年二人三脚で仕事をこなしてきたのだから何だかんだ言っても、相性は良いのだろうか。
……よく、分からなくなってきた。
で、結局。
黒瀬さんは私に何が聞きたかったのか。
二人の言い争いにより、完全に聞くタイミングを失ってしまった。