わたし、BL声優になりました
 残されたゆらぎは、主《あるじ》のいない部屋で遠慮がちにソファに腰を降ろす。

「相変わらず、片付いてるなぁ」

 ぼんやりと部屋を見渡し、無意識に独り言を呟いた。

 黒瀬の部屋は主に黒色でまとめられていて、大人な雰囲気だ。

 対して、緑川の部屋は白を基準としたインテリアで綺麗に揃えられていた。

 すっきりとした綺麗な部屋を見る度に、いつも疑問に思う。

 芸能人の家というのは、実はインテリアコーディネーターがいるのではないか、と。

 自身の部屋は、ただ単に物が殆ど無いだけで、お洒落な部屋とは程遠い。

 ゆらぎは黒瀬が居ないのを良いことに、無遠慮に部屋の至るところを凝視していた。

 すると、シャワーを浴び終えた黒瀬に、その姿を目撃されてしまった。

「……何、してんの。お前」

「は! いや、黒瀬先輩の部屋は、何時来ても綺麗だなーと思いまして。決して、変なことをしようとしてた訳ではないですよ……って」

 ……って、黒瀬先輩。パンツ一丁じゃないですか!

 弁解しながら振り向いたゆらぎは、黒瀬の下着姿に驚き、思わず視線を逸らした。

 流石に先輩のこの姿は頂けない。

 恥じらいというか、何というか……。

 私自身も男装をしている身ではあるけれど、仮にも女性の前で、堂々とパンツ姿を晒されて、私は一体どうしたら良いのか。

 いや、どうもしなくて良いのか。
 何だか、見てるこっちが恥ずかしい。

「白石、顔赤くないか? もしかして、俺より先にもう一杯引っかけたのか」

「お、オレ、酒は飲めないので。違います……」
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