わたし、BL声優になりました
緑川は通り過ぎる瞬間に、ゆらぎの耳元に顔を寄せて、囁いた。
「うん。よく出来ました。今日、収録終わったら、このまま僕の家に直行だからね」
ぞわりとした感覚が身体を駆け抜け、強張る。
何か言い訳をして逃げようとしていたのに、完全に先手を打たれてしまった。
「着替え、持ってきてないんですけど」
「そんなの貸すし。ほら、ヘッドホン着けて。始まるよ」
緑川はなに食わぬでマイク前に立ち、小さく咳払いをして、喉の調子を整える。
その様子を、ゆらぎは横目で一瞥しながら、自身も付箋が貼られた台本を開いた。
『じゃあ、二人とも準備はいいかな。三、二、一……』
濵田監督は音響室から収録の合図を出す。
キューランプが灯り、二人は気持ちを切り替えた。
「──先輩はボクのものなのに……どうして、いつもキミばかりが可愛いがられるんだっ!!」
緑川の悲痛な台詞が収録室に響き渡った。
「そんなことを言われたって……。俺だって何がどうなっているのか、分かんないんだよっ!」
二人の演技は、台詞を重ねる毎に徐々に白熱していく。
『はい、一旦ストップ。うん、二人ともすごく良かったよ。このままでいこうか』
監督から初めての一発オーケーを貰い、ゆらぎは思わず、緑川の方へ視線を移す。
緑川は視線に気がつくと、口の動きだけで収録の感想を伝えてきた。
『……ご、う、か、く……』
合格って……。
「うん。よく出来ました。今日、収録終わったら、このまま僕の家に直行だからね」
ぞわりとした感覚が身体を駆け抜け、強張る。
何か言い訳をして逃げようとしていたのに、完全に先手を打たれてしまった。
「着替え、持ってきてないんですけど」
「そんなの貸すし。ほら、ヘッドホン着けて。始まるよ」
緑川はなに食わぬでマイク前に立ち、小さく咳払いをして、喉の調子を整える。
その様子を、ゆらぎは横目で一瞥しながら、自身も付箋が貼られた台本を開いた。
『じゃあ、二人とも準備はいいかな。三、二、一……』
濵田監督は音響室から収録の合図を出す。
キューランプが灯り、二人は気持ちを切り替えた。
「──先輩はボクのものなのに……どうして、いつもキミばかりが可愛いがられるんだっ!!」
緑川の悲痛な台詞が収録室に響き渡った。
「そんなことを言われたって……。俺だって何がどうなっているのか、分かんないんだよっ!」
二人の演技は、台詞を重ねる毎に徐々に白熱していく。
『はい、一旦ストップ。うん、二人ともすごく良かったよ。このままでいこうか』
監督から初めての一発オーケーを貰い、ゆらぎは思わず、緑川の方へ視線を移す。
緑川は視線に気がつくと、口の動きだけで収録の感想を伝えてきた。
『……ご、う、か、く……』
合格って……。