わたし、BL声優になりました
 
「黒瀬から連絡が来たんだ。どういう内容だったと思う?」

 嫉妬という言葉を誤魔化すように、緑川はゆらぎに問い掛ける。

「内容、ですか? 俺にもう関わらないでほしい……とかですかね」

「それも嫌だけど、違うよ。……もう一度、シライさんに会わせてほしい、だって」

 シライって、私が女装したときに使った偽名だ。

 それって……。
 やっぱり、黒瀬先輩は気付いていたってこと?

「で、今は後悔してる。黒瀬に会わせなければ良かったって。こうなるなんて思わなかったんだ」

 ゆらぎは緑川の異変に気付き、表情をそっと窺う。普段とは違う、緑川の雰囲気に戸惑いを隠せなかった。

「後悔って……どういうことですか?」

 ウグイス先輩はさっきから嫉妬だ後悔だ、と何を言っているのだろう。

 いくつもの疑問符が浮かぶ。

 でも──。これは……。

「まだ確信はしてない。けど、俺は多分。──君のことが好きなんだと思う」

 緑川はゆらぎを見つめたまま、真剣な眼差しで言葉を紡いだ。

「えっ……」

 ウグイス先輩が、私のことを好き?

 それは、人としてなのだろうか。
 それとも……。

 ウグイス先輩の突然の告白に、ゆらぎは戸惑いを隠せないまま、言葉を紡ぐ。
 
「……ウグイス先輩は、私のことを女性として認識してるんですか?」

「当たり前だろ。どう見ても男には見えないし。むしろ、気づかない周りが鈍すぎる」
 
< 68 / 190 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop