わたし、BL声優になりました

「だったら、やられる前にやっちゃう?」

「は?」

 黒瀬の嫌味をさらりとかわして、小悪魔的な笑みを浮かべた緑川は二人に問い掛けた。

「だーかーら。冬馬さゆって子が何かする前にこっちからアクションすればいいって言ってるんだよ」

「でも、そんなことって可能でしょうか。さゆは、私に何らかの悪感情を抱いてるんですよね? そんなに簡単に尻尾を出すとは思えませんよ」

「仮にも友人相手にすごい言い様だな」

 辛辣な意見を述べるゆらぎに、黒瀬は思わず苦笑した。

「いえ。さゆの性格は、はっきりしているので、それなりに分かってるつもり……な、だけです」

「じゃあ、そのはっきりした性格を逆手に取ればいいってことか……」

「おい、二人で勝手に話を進めるな」

「黒瀬は女心には疎そうだからねー。言っても分からないかもね」

「お前だって男だろうが。女心なんて分かるわけないだろ」

「本当に可愛いね、黒瀬は。そんなことで、この僕が苦労するわけないじゃないか」

「あ? どういう──」

「あの!! いいから話を進めませんか?」

 ゆらぎが止めに入ると緑川に嘲笑された、黒瀬は忌々しげに舌打ちをした。

 今回のことでよく分かったが、この三人が集まると、まるで話が進まない。必ず言い争いになり、残った一人が止めに入るはめになるのだ。

 全員が主張を曲げないせいなのか。
 それとも、性格の不一致なのか。
 おそらく、両方だろう。

< 85 / 190 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop