わたし、BL声優になりました
「どうしたら……」
ゆらぎは携帯画面を見つめたまま、焦燥していた。
こんなことってあるの?
自問自答してみても、答えは返ってこない。
さゆに連絡を取ろうとした矢先のことだった。彼女と連絡がつかないのだ。
何度も電話を掛けたり、メールを送ったりもした。だが、そのどれもが繋がらない。メールに至っては未読のままだ。既読にすらならない。
これが意図的なのか、判断がつかない。
意気込んでいたゆらぎは、突然に出鼻を挫かれ、すっかり意気消沈としていた。
もう駄目かもしれない。
いつ、あの写真が出てもおかしくない。
そしたら、私も黒瀬先輩も、きっと終わりだ。
その前に出来るだけ手を打ちたかった。
鬱々とした思考が廻る。
そんな時だった。寮のドアをノックし、控えめな声で訪ねて来たのは、マネージャーの赤坂だ。
「白石くん、ちょっといいですか。事務所に来ていただきたいのですが」
「い、今行きます」
ぼんやりとしていた意識を振り払い、慌ててスニーカーを履いて、ゆらぎは事務室へ向かった。
事務室に入った途端、足が竦んだ。
脳裏に良くないことが浮かんだ。
何も言葉が出ては来なかった。
そして、悟った。
事務室にいたのはマネージャーの赤坂と黒瀬。田中銀次社長の三人だけだ。
だが、空気が違った。いつものような和気藹々とした穏やかな空気ではなかった。重苦しい緊張感が張りつめていた。