わたし、BL声優になりました
「ちなみに期限はいつまでですか?」

「三日間の猶予を与える。と相手は言ってきているね。期間があまりにも短い。つまり、相手は考える時間を僕たちに与えるつもりはないということだろうね」

「なるほど。……私が辞めるか、事務所を移籍させるかの二選択のどちらかしかないんですね」

 いつだって、現実は残酷だ。

 それを知らしめるかのような局面に、力のない私は為す術など、勿論何も持ち合わせてはいない。

 ──やっぱり、私が。

 喉元までせり上がった言葉は、思いがけない黒瀬の言葉により塞がれた。

「白石を辞めさせるなら、俺も辞めてやる。未練なんてない」

「な、にを言ってるんですか、黒瀬先輩。駄目ですよ、そんなこと。私が許しません」

 自分が犠牲になるのは想定内だ、仕方ないし、納得も出来る。だが、先輩を巻き込むのは嫌だった。私が辞めることで全てが丸く収まるのなら、これ以上、無闇に騒動を大きくしたくない。

「後輩は黙って、先輩の言うこと聞いてろよ。俺はお前を必ず救ってみせる。……緑川だけに良い顔させられるかよ」

「え? 今、なんて……」

「あ? 何か文句でもあるのか」

「いえ、何も……」

< 94 / 190 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop